2017年8月11日金曜日
お勧め映画 第19回目『父親たちの星条旗』
個人的お勧め映画。
今回は『父親たちの星条旗』です。
この映画の脚本は『硫黄島の星条旗』という本をウィリアム・ブロイレス・Jとポール・ハギスさんが脚色し出来たものです。
『硫黄島からの手紙』も一緒に観ると映画に深みがでる作品です。
映画の簡単な内容です。
硫黄島に星条旗を掲げた英雄の3人の英雄の1人。元海軍の衛生兵ジョン・“ドク”・ブラッドリー。
彼は家族に硫黄島での戦いや英雄になった写真のことも語らずにいた。
そこで彼の息子ジェームズは、自分の父のこと、硫黄島での戦いのこと、写真のこと、戦いのその後のことを紐解こうとする。
という感じの内容です。
『硫黄島からの手紙』は硫黄島での戦いのことが語られていますが、この作品は戦いのその後、星条旗を掲げる写真、アメリカ国内の状況などが語れます。
※注意 戦争映画なのでとてもショッキングな映像があります。そういうのが苦手な方にはお勧めできませんが……ただ、ショッキングな映像を売りにしてる作品ではないのです。
個人的お勧めポイント
1、三人の英雄
2、アメリカの圧倒的な国力
3、2つの映画の違いと共通するラスト
1、三人の英雄
写真の力は大きい。劇的な写真というのは、時に戦争の勝敗すら左右する。
ベトナム戦争では、南ベトナムの士官が捕虜のこめかみを撃つ瞬間を捉えた写真。あれでアメリカは負けた。
同じ日に撮った写真は他にもあったが、歴史を変えはしなった。
そして、太平洋戦争の歴史を変えた写真。それが硫黄島に星条旗を掲げる6人の兵士の写真。
これがアメリカに希望を与え、状況を変えた。
このアメリカに希望を与えた写真のメンバーの中の3人。
衛生兵のジョン・“ドク”・ブラッドリー、レイニー・ギャグノン、アイラ・“チーフ”・ヘイズ。彼らは人々から英雄と呼ばれた。
彼らは戦場から本土へ呼ばれ、国債ツアーという戦いを命じられる。アメリカは破産寸前。更に戦いが長引き国民はうんざりしていた。
そんな時、新聞の一面を飾る写真。硫黄島に星条旗を掲げる6人の兵士達。彼らが与えた希望はとても大きかった。
あと少しで戦いは終わる。だから、国債を買って戦地で戦う仲間達を助けてください。と3人は呼びかける。死んでしまった3人や多くの仲間達のために。
しかし、アイラはこの活動に嫌悪感を感じているようだった。英雄と呼ばれるのもとても辛そうだ。
彼は自分がメンバーにいたことは黙っていてくれ、とレイニーに鬼気迫る表情で訴えた。彼だけは、その後の自分達の展開がわかっていたかのように。
安全な国に戻り、国債を買って下さい、と回る日々。夜は華やかなパーティーに呼ばれ、更に他のメンバーの母親に会うなどして、人々に感動を与え、お金を集める。
アメリカの苦しい財政のための活動の日々。人々は彼らを英雄と呼ぶが、特別彼らが何かをしたわけではない。
たまたま、星条旗を掲げる写真に写って、生きているというだけだった。
本当の英雄は、戦場で戦い死んでいった仲間達や上官だ。彼らは自分達が英雄扱いされることに苦しんでいく。
特に、アイラはそれが強く。彼は戦いの後もそれで苦しんでいる姿が描かれています。
更に、英雄も戦争が終われば見向きもされなくなる。そんな悲しさも描かれています。
英雄は存在しない。少なくとも人々が想像するような英雄は。
しかし、人々には英雄という存在が必要だ。
誰かが、その重すぎる役目を背負わないといけない。
それが彼ら3人だった。という感じに描かれています。それがとても分かりやすく、そして考えさせます。
2、アメリカの圧倒的な国力
アメリカの圧倒的な国力が十分描かれています。
凄い数の艦隊が硫黄島に迫ります。この数を相手にした日本は……と絶望するくらいの数です。
更に二十日間の空爆に、艦隊到着後には艦隊から3日間にわたる砲撃。本当は10日の砲撃予定でしたが、アメリカの本部は3日にしろ、と要請し3日です。
こんな凄い攻撃を防ぎながら当時の日本は戦ったのか、と思う絶望しかありません。
もし、硫黄島で迎え撃つのが栗林中将じゃなかったら、3日間の砲撃で大被害だったでしょう。
一方、アメリカも10日間の砲撃を3日に減らしたのは、それでも辛い財政だった、ということなんでしょう。
艦隊の数や兵隊の数といった部分以外でもアメリカの圧倒的な国力がわかります。
これは例えなんですが、父、母、長男、次男という家族があるとします。
アメリカの家庭は長男だけが戦争へ行き、次男はヤンキースの試合を観ています。家に帰り食卓で両親に。
「なんで兄さんは戦争に行ってるの? 隣の家は行ってないよ? 兄さんもヤンキースの試合観ればいいのに」なんて会話がでそうな状況です。野球が戦争中にあるんです。日本では野球選手も狩り出されていましたので、そこが全く違います。
もし、日本の家族だと父と長男が戦争に行き、次男は工場。母も戦争に関係する仕事をしていたでしょう。
日本は国民が一丸となって戦争をしてますが、アメリカは違います。それでも圧倒的な戦力を持っていたことが驚きです。
しかし、これがアメリカが抱える問題点です。
家族の中で「なんで兄さんは戦争にいってるの? 隣の家は行ってないよ?」という会話が出てしまうと、当然国民の不満は募ります。
日本では「みんなそうだから」という強い同調圧力が働きますが、アメリカではそれがないため、戦争が長引けば状況は変わってしまいます。
うんざりし、こんなに長引くならやめたら? という勢力が強くなります。ベトナム戦争、イラク戦争、等でもそれが見れましたよね。
太平洋戦争でもそういう勢力が強くなり、それをあの写真が変えた、ということが上手く描かれています。
3、2つの映画の違いと共通するラスト
この映画も『硫黄島からの手紙』も同じ硫黄島の戦いを描いていますが、内容はどちらも違います。
単にアメリカから見た硫黄島の戦いにせずに、当時のアメリカの国の状況や、写真の秘密とその英雄達、そして戦いのその後をメインにしたのが素晴らしいです。
2つの作品は違う作りになっていますが、それでも2つを知っていると、作品に深みが出る作りなっているところが素晴らしいです。
硫黄島でアメリカ兵を待ち構える日本兵。このシーンは『硫黄島からの手紙』を観ていると、「ああ、ここで栗林中将が合図を出したんだな」とか思えます。
アメリカが砲撃するシーンでは、地下で砲撃を耐える日本兵を思い出します。
更に、日本兵に見つかり殺されるイギーもあのシーンのアメリカ兵がイギーか……と思ったり、2つを知っているほうが深くなります。
一方、両作品に共通するものがあります。それはラストシーンです。
映画のラストは、お互いほんの少しの希望を見せる、というラストになっています。
どちらもとても重い話ですから、心が悲しくなる人もいるでしょう。そこに最後でほんの少し小さな希望の明かりを見せる。
これがクリント・イーストウッド監督さんのなせるわざです。本当に素晴らしい!!
最後に
『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』をあわせて観る事でわかることもあるので、是非二つ観て欲しい映画です。
どちらも話も素晴らしいですし、悲しげな音楽などが心に残ります。そして、両方最後に小さな光を見せる。これで心がほんの少し救われます。
私の中で忘れることが出来ない2つの映画になりました。
更に、この映画を観ているとアメリカのアメコミヒーローについても考えさせられます。
彼らヒーローも僕たちは英雄じゃない、と言います。
特にバットマンは「英雄じゃない。街を静かに監視する暗黒の騎士」となっています。
英雄は存在しない。しかし、人々には英雄という道しるべが必要。
誰かがその重荷を背負わないといけない、ということをコミックで今も語り継いでいるのかな? と思いました。
他の作品『ブラックホーク・ダウン』でも「仲間の為に戦う。英雄になるためじゃない。結果的にそうなっただけ」と言います。
それはこの作品『父親たちの星条旗』でも同じです。
「国の為に命を犠牲にするという行為を理解するために英雄は必要なのだ。しかし、危険を冒したのは仲間のため。国のために戦ったのかもしれないが、死んだのは友達のため、前線ですぐそばにいた男達のためだ」
「彼らの栄誉を称えたいなら、本当の姿を覚えておくべきだろう」という語りにあるとおりです。
このように、英雄は存在しない。しかし、英雄という存在は人々に必要だから、誰かがその重荷を背負っている。
みんな戦う理由は国のためではなく、友達やすぐそばにいる仲間のため。
この部分をどの映画でも強調しているところは素晴らしいです。戦争と向き合い、深く考えた結果、どの映画も同じ事を強調できているのだろう、と思います。
私たちはそれを観て、そこから自分達で考え、どう思うのか、ということが大事だと思います。
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