2017年8月11日金曜日

お勧め映画 第18回目『硫黄島からの手紙』


 個人的お勧め映画。
 今回は『硫黄島からの手紙』です。

 この映画に関しては、とても3つのポイントでは足りなくらいお勧めな部分がありますが、なんとかいつも通り3つに収めました。


 この映画の簡単な内容を紹介します。
 栗林忠道陸軍中将をメインに硫黄島での戦いを描いています。
5日で終わる戦い、と言われた戦いを30日も越える激戦になぜできたのか?
 それは栗林中将というアメリカをよく知る人がいたから。栗林中将はアメリカに駐在していた時期もあり、アメリカ人との交流もありました。そこでアメリカという国を知りました。

 栗林中将は、当時の日本人とは少し違う思考の持ち主で、その違いがよく表現されている映画です。もちろん、他の人達の力もありますが、この映画では栗林中将を中心に光を当てています。

 硫黄島の戦いが持つ意味。それをしっかりと理解した方々が戦った30日を越える戦い。そこにを様々な人の手紙というものを入れ、それがとても重大な役割を担っています。

 もう一つの作品『父親たちの星条旗』も合わせて観るとより価値が増します。これ一本でもいいですが、是非『父親たちの星条旗』も観た方が絶対硫黄島の戦いについて幅が広がります。
 

 アメリカから観た第二次大戦。そして、硫黄島。5日で終わる予定の戦い、と実際の戦い。政府と現場の認識の違い。そういう部分が観れる内容です。

 ※注意 戦争映画なのでとてもショッキングな映像があります。そういうのが苦手な方にはお勧めできませんが……ただ、ショッキングな映像を売りにしてる作品ではないのです。



個人的お勧めポイント

1、渡辺謙が演じる栗林忠道さん
2、野崎という人物が持つ安心感
3、様々な人の手紙に込められた想い



1、渡辺謙が演じる栗林忠道さん
 この映画での栗林中将は、他の人から見たらちょっと不思議な上官、という感じの方です。この不思議さは、全くアメリカを知らないたくさんの日本人の中で、唯一アメリカを知る
数少ない指揮官が、指揮を執ることで生まれるものです。
 

 映画の中では栗林中将の作戦は奇抜なもので、他の士官の常識とはまったく違います。
 しかし、大きな違いは作戦の奇抜さより、『この硫黄島での戦いが、何を意味するのか?』ということを他の誰よりも理解しているところです。
 更にアメリカを知る栗林中将は、『アメリカという国の力はどれほどか?』ということもしっかり理解しています。

 栗林中将は、『この戦いはとても勝てる戦いではない』という事はよくわかっていたでしょう。
 しかし、絶対に下がるということはできません。ここで下がる、ということがどういうことなのかもちゃんとわかっているからです。
 

 勝てない戦いを戦いぬく事と、玉砕という無茶苦茶とは全く違います。この違いがなんなのかは、この映画を観ればきっとわかってもらえると思います。

 そして、栗林中将を演じる渡辺謙さんは本当に素晴らしいです。
 この映画の中でいろんな栗林中将を演じています。
 穏やかさ、厳しさ、悲しさなど、いろんな面が見れます。そして、安堵する栗林中将は……。

 ※ これは映画で、美化された栗林中将というのは分かってはいますが、アメリカに駐在していた事実と、5日で終わる戦いを30日を超える戦いにした、という事は間違いないので、そこだけでもしっかり理解してもいい、と思います。


2、野崎という人物が持つ安心感
 二宮和也さんが演じる西郷という人物と親しい関係に野崎という人物がいます。野崎という役は、松崎悠希さんが演じてます。
 この野崎と言う人物がとても素晴らしかったです。この映画には外せない人物です。

 実は私がこの映画で一番いいな、と思った俳優さんが野崎を演じる松崎さんです。
 栗林中将は理想の上司と言う感じで、その設定だけでもいいな、と思えます。
 しかし、野崎は西郷の友人という普通の設定です。この『普通の友人』野崎がとても素晴らしい。
 彼の魅力は、『日本の兄ちゃん』と言う感じです。これがビンビン出てます。本当に『頼れて、温かい、日本の兄ちゃん』と言う感じです。この魅力はなかなか出せないです。
 

 重たい戦争映画の中に咲く、『日本の温かい兄ちゃん』という花です。
 本当に素晴らしい俳優さんで、松崎さんの今後の活躍を楽しみにしています。


3、様々な人の手紙に込められた想い
 栗林中将のアメリカでの話は手紙で語れます。少しずつ過去の話がわかるのですが、その出し方が凄く上手いです。
 特に栗林中将が持っているアメリカの拳銃についての話はよかったです。

 映画では、栗林中将の家族への手紙と、西郷の妻への手紙が話の幅を広げる役割を持っています。
 

 硫黄島に来る前に、西郷が何をしていたのか? などが語られます。
 彼は大宮でパン屋をしていたが、戦争で食材が持っていかれ、道具も持っていかれ、最後には自分が出兵へ……という、当時の状況もわかります。
 出兵する時に彼が妻とした約束があり、それを無事に彼が果たせるか? と思わせる見せ方です。

 更に、捕虜になったアメリカ兵の手紙も見つかり、それを読むシーンがあるのですが、ここでアメリカ兵も自分達と変わらない人間であることに気づかされます。
 他にもたくさんの日本兵が家族へ書いた手紙があり、その手紙の行方はどうなったのか……? 

 映画として上手く手紙と言う要素を使い。話の幅を広げ、栗林中将や西郷の掘り下げ、更にアメリカ人も手紙に込める気持ちは同じ、といろんなものを見せる大切なキーアイテムになっています。
 

 タイトルが『硫黄島からの手紙』とあるように、手紙に凄い拘りを感じる作品です。さすが、クリント・イーストウッド監督さん!! 素晴らしいです!!

 
最後に
 個人的には、この作品がクリント・イーストウッド監督さんによって撮られた映画とは思えませんでした。
 まるで日本人が撮ったかのような映画でした。質は圧倒的にアメリカですが。
 

 『日本は悪』みたいな偏見を個人的には全く受けず、一方で当時の日本人はアメリカ人を非常に誤解していた、という部分もしっかり描かれています。
 もちろん、多少はアメリカ人も日本人を誤解していると思いますが、日本人のアメリカ人に対する認識はもの凄く誤差があり。これではな……と思います。
 

 不愉快さや偏見による悲しさを感じることなく、硫黄島の戦いを観させてもらいました。
 更に、『父親たちの星条旗』と合わせて観れば、より幅が広がるように作ってあって、本当に素晴らしい映画です。
 
 ポイントに挙げましたが、『手紙』という大切なキーアイテムをとても上手く使っていました。始まりのシーンから終わりのシーンまで、全てが計算された映画です。

 ポイントには挙げてませんでしたが、栗林中将や西郷、野崎以外にもたくさんの魅力ある人物が登場しています。
 憲兵の清水の話もいいですし、西中佐も映画に欠かせない存在です。彼もアメリカをよく知る存在で、彼が捕虜の手紙を読み、誤解していることを教えます。

 そして、個人的にはやはり野崎さんです。
 とても素晴らしい人物で、彼がこの映画の重たさを少し軽くしてくれます。
 松崎悠希さんの今後の活躍が楽しみです。

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グリフィン理論

  いつだって10月だし11月だし3月なんだ。  このグリフィンさんの教えは贈り物。  誰だってジェイソン・ボーンだしジェームズ・エドワーズ。  ロバート・アンジャーでローン・レンジャー。  そして、ネオでもある……忘れているだけで。