2019年3月22日金曜日

届かない手紙 9通目


 拝啓

 歌う不死蝶様、うぐいすが鳴く春になりました。私の場合、鳴くまで待とう、というより、鳴くまで忘れた、うぐいす、という感じです。
 忘れていた春、そんな新しいスタートの時期になりました。
 プロ野球より先にメジャーリーグが開幕を迎え、マリナーズとアスレチックスの開幕戦が日本の東京で行われました。
 今、マリナーズにはイチロー選手、菊池選手が所属しています。
 
 私もこの開幕戦を楽しみにしていました。
 菊池選手が先発し、イチロー選手がライトにいる。
 その光景は夢のようでした。

 そして、この開幕戦の後、イチロー選手の引退の発表を聞き驚きました。
 歌う不死蝶さんも野球がお好きと、風の噂で聞いていたので、この衝撃的なニュースを伝えたい、と思い、今手紙を描いています。

 「最低、50歳までやる」というイチロー選手の言葉を本気で信じていた私が、このニュースに盗まれた気持ちはとても大きかったです。
 歌う不死蝶さんはどうでしょうか?
 このニュースを当たり前のことだと、受け取ることができますか?
 私にはできませんでした。

 引退せず続けていく。それがイチロー選手の当たり前だと思っていたので、気持ちが盗まれました。

 そんな詐欺に騙されたような私ですが、今の気分は最高です。

 イチロー選手になら騙されてもいい、と心から信じることができて、それを疑わずに終えられたこと。
 この気持ちを最高と言わず、何を最高と言うのでしょうか。
 
 私が見た、年齢など関係なく続ける背中。
 その夢の影が崩れることなく、最後まで見続けることができたこと。それは本当に幸せでした。
 そして、盗まれた気持ちの変わりにあったもの。

 それが夢だと思っています。

 本当に60過ぎても現役で、三冠王から八冠王までを制覇するような活躍をする。
 そんな夢をこの瞬間まで見れたことは、唯一無二の最高の夢です。

 偉大な記録を作ったり、記憶に残る場面での活躍、たくさんの夢を見せていただきましたが、この瞬間に見た夢の形は最高の輝きでした。

 できそうにないことを本当にやり遂げそうな雰囲気。
 そんな夢を見せることは、とても難しいことだと思います。

 それを当たり前のようにやってみせる、イチロー選手はやっぱり伝説だな……と改めて思っています。

 
 たくさんの夢や様々な気持ちを本当にありがとうございます。
 そして、私達には知りえない苦しさの中、イチローという人物を守り続ける日々。本当にお連れ様でした。
 野球でもゴールデングラブ賞を何度も獲得する名手でしたが、イチローという人物を守る最高の人です。それを支える皆様も最高で、最高の一つのチームでした。


 ただ、詐欺師という部分では、いつか私達の方が勝ると思います。

 ですから、ご注意ください。
 騙し欺き視点を支配し、時間と気持ちを盗む影に。

 感謝の気持ちと、お疲れ様でしたという気持ち。
 そして、これから何をするのか、と気になってしまう気持ち。
 歌う不死蝶さんはどうでしょうか? イチロー選手の引退というニュースに、私と似た気持ちを見ているのでしょうか?

 忘れていた、春のような景色を。

 いつか、その答えやイチロー選手、野球の話など、境界線がない話を歌う不死蝶さんとできたら、と思っています。
 私にほんの少し遠い夢を見せてくれる、歌う不死蝶さんも私の特別な伝説です。

 たくさんの特別な伝説を見てきた私は凄く幸せ者です。
 これからも、その伝説達をなるべくたくさん集めていく予定です。
 何か衝撃的なニュースがあれば、またこの手紙に描きます。

 それから、私達で飛ばす物語も創っていきます。
 歌う不死蝶さんが届ける風に乗れる物語を。

 私、私達の大切な特別な伝説の皆様に。
 改めて、感謝の気持ちとお疲れ様の気持ち。
 そして、これからもよろしくお願いします、という気持ちを込めます。
 
 歌う不死蝶さん、これからもよろしくお願いします。
 
 

 それでは、また次のお手紙でお会いしましょう。


 敬具


 歌う不死蝶様と共に未来の夢を見る一人より



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グリフィン理論

  いつだって10月だし11月だし3月なんだ。  このグリフィンさんの教えは贈り物。  誰だってジェイソン・ボーンだしジェームズ・エドワーズ。  ロバート・アンジャーでローン・レンジャー。  そして、ネオでもある……忘れているだけで。