2019年6月7日金曜日

届かない手紙 11通目


 拝啓
 
 歌う不死蝶様、すっかり夏に近い暑さになってきた今日この頃です。トタン屋根の上のアイスクリームはきれいにとけていく、そんな暑さです。

 ちょうど、そのとけた甘い蜜が私のもとに降ってきました。
 それは、今年の3月に現れた一つの分岐点。
 だけど、何も起きなかった分岐点。
 少しふて腐れ、腐りかけた3月。

 腐らずに舵をきれたのは隣にいた相方と、『あなたと共に走りたい』という気持ちのお蔭でした。

 それからは、別の方角へ船首を向けて進んでいました。今もそうです。
 今の気持ちは私達が旅した、『遠い昔の銀河の海』。その旅の記憶に似ています。
 宝島を目指した旅路。その旅路の果てで見たあの景色です。
 その景色の中で、あなたと共に新しい冒険に出かけたい、と今も強く想っています。

 ところが、最近は座礁気味で、なかなかその気持ちが上手く前に進みません。
 くすぶっていた胸に投げ込んだ炎。それは今も燃えているのですが、空回りのロックンロールを奏でてしまっています。
 それを蹴り上げればいいと思うのですが、私はその不思議なリズムに魅了されているようです。
 とはいえ、何れは次のフロンティアへ向かうと思います。
 止まらずに何かを廻し続ける。そのエンジンが動いている限り。
 
 そんな暗礁に捕まりそうな最近。驚きの知らせを目にしました。
 あの3月の分岐点が、また私の目の前に現れたのです。
 これには本当に驚きました。3月に飛ばした物語を乗せた紙飛行機。
 それは、このまま限られた人だけ知る飛行機として、時代の深淵に消えて行くものだと思っていましたから。

 それがいつの間にか、伝説の過未飛行機に変わったようです。
 そうです。前回のお手紙で紹介した、あの飛行機です。
 自分で紹介しておきながら、それが目の前に現れた時にはとても驚きました。
 様々なものが重なり、あらゆることを歪ませる。あれは伝説の過未飛行機。
 気持ちが放つ幽かな灯りを手掛かりに飛ぶ。

 今年の6月に見た、過未飛行機が探す手掛かり。

 その幽かな灯りを私は見た気がします。

 この夏に現れたあの分岐点。

 そのちょっとした事件の答え。
 それはあなたからの贈り物という答えで、私も相方も納得しています。
 私の解釈は頼りなくても、名探偵の相方の解釈は頼りになります。
 きっと、目の前の分岐点はあなたから贈られた、大切な機会だと思い。大切に使わせていただきました。
 本当にありがとうございます。

 ステキな歌だったり、ファンと向き合う姿勢だったり、たくさんの贈り物をいただきましたが、また大切な贈り物をいただくことになるなんて。
 本当に、本当にありがとうございます。
 やっぱり、ほんの少し離れた場所からでも、何かが届くようですね。
 重なる力や様々な力。

 それらが、ゆがみ、ねじれ、よじれ、急旋回して、揺れて乱れ飛び続ける。
 
 私達が飛ばす紙飛行機も過未飛行機に変わって、あなたのもとへ届くと幸せです。
 その日がくるまで、いえその日が訪れても、どんどん飛ばしますが、いつか世界中にいる皆様の気持ちも届いたら、と願い。そんな明日を信じています。
 
 歌う不死蝶さん、あなたのお蔭で清々しい夏を過ごせそうです。
 飛ばした飛行機の行方を心配する、そんなアイスクリームはもうトタン屋根の上です。
 これも、あなたがくれた、最高の機会のお蔭です。本当にありがとうございます。
 
 私達のこれからの予定。
 定めの金網をくぐり抜け、誰にでも会いに行けて、台無しにした全てを帳消しにできる。
 そんな今を描く物語を大切につくっていきます。


 もしよければ、是非歌う不死蝶さんのお力もお貸しください。
 一緒にゴキゲンでウカレタことをしましょう。
 その日がくるまで、きらめいて一途な風を相方と共に探します。
 あなたと共に物語の中を走り続けるために。


 
 

 それでは、また次のお手紙でお会いしましょう。


 敬具


 歌う不死蝶様と共に未来の夢を見る一人より


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グリフィン理論

  いつだって10月だし11月だし3月なんだ。  このグリフィンさんの教えは贈り物。  誰だってジェイソン・ボーンだしジェームズ・エドワーズ。  ロバート・アンジャーでローン・レンジャー。  そして、ネオでもある……忘れているだけで。