2019年12月14日土曜日

届かない手紙 17通目




  
 拝啓

 歌う不死蝶様、今年の最後の月、最後のお手紙です。
 今、目の前にある12月。
 それは、ほんの少し暗く寒い。長く乾いた冬の月です。
 ですから、このお手紙もほんの少し長くなりそうです。
 どうか、お付き合いください。

 冬になってからの私は、何かを蹴り飛ばしたい衝動に駆られていました。
 何でもいいから、蹴飛ばさないと気がすまない。
 そんな気分でした。

 そんな12月のある日。
 この現実と眠っていた幻実の中間の狭間。
 そこで、優しく温かい声が、私に。

 もし、目の前にチャンスが流れてきたら。
 それに、素直に乗ってみてはどうでしょうか?
 
 そう問いかけました。
 私は曖昧な意識の奥の方で、そうだね、と答えました。
 きっと、あの声の主は私の相方で。
 相方がそう言うので、荒くれた冬の私も少し穏やかになれたのでしょう。
 
 もし本当に、何かのチャンスが訪ねて来たら。
 それに素直に乗ろう、上昇気流に乗る凧のように。
 そう思いながらも、そのまま荒くれた冬の私は、蹴りたい衝動と共にありました。

 その2~3日後、あっけないメールが届きました。
 それは、予想通りの内容を知らせるだけのものでした。
 来年まで待たされると考えながら、準備をしてきた中。
 今年中に、はっきりと片付いた一件。

 正直な本音を明かすと、今年は散々な1年でした。
 やること為すこと、全て上手くいかず。
 なるほど、私は何かに挑戦したり、行動したりしてはいけない人だと。
 そういう教訓を得る1年でした。

 その1年を終業するように受け取った、最後の通知表。
 その瞬間は、気づきませんでしたが、寝床に入った瞬間にあることに気づきました。
 それは、数日前の相方の言葉です。

 もし、チャンスが流れてきたら……。
 その言葉を思い出し、私は納得しました。
 そして、あの蹴りたい衝動も小さくなっていました。

 このチャンス、この機会。
 それは、蹴りたくありません。
 ここまで隠していた秘密は、トタン屋根に放り投げ。
 この新しい秘密を抱えて、来年を迎えられる。
 それは、とても最高なことだと気づきました。

 そう気づけたのも、この冬のお蔭です。
 暗い冬だから見えた光。
 寒い冬だから感じた温かい声。
 乾いていたから、渇いた心が欲した何かだと思います。

 例えば、愛とか。

 その愛、それが本題です。
 私は今年の後半に、今までとは違う。
 新しい愛に出会いました。
 
 これまでの私は、愛と聞けば照れ臭くなり、向き合わないふりをしてきました。
 自分には無縁なもの。
 薄情な私は薄情さを乗りこなす、風来坊的な何か。
 そう思ってきました。

 ところが、その考えを変えてしまう歌に出会いました。
 それは、歌う不死蝶さんが歌う、『希望ノカケラ』です。
 その中にあった、確かな重さの愛。
 それは、照れ臭さすらも照らしてしまう。
 温かく大きな心、そんな『月光陽光』でした。

 恋愛の愛しか知らず、愛とは男女のラブソング。
 そう囚われていた私に、とても広く大きな世界を見せてくれました。

 ラブソング。
 それは、男女の間にある愛だけとは限らない。
 むしろ、何もないからこそ、力強く確かにある、そんな愛もある。
 そして、それを誰もが持っている。

 最初は見えなかった、『希望ノカケラ』の中の確かな重さの愛。
 だけど、様々な歌詞と出逢い、見えてきたその愛。
  
 浮気性で一途とは程遠い私ですが……。
 そんな私も照らしてくださる。
 歌う不死蝶さんの力強く温かく優しい、歌。

 その歌が届ける風と光。
 歌う不死蝶さんは私達を照らす、『月光陽光』です。
 どうか、このまま。
 私達を照らしてください。

 冬の寒さと暗さが、月光をより輝かせる。
 夏の暑さと明るさが、陽光を待っている。

 月光だから見えるもの。
 陽光だから見えてしまうもの。
 今の季節にしか見えない何かもありますね。
 これまで、見失っていた季節感。
 それを思い出せる、風にも出会いました。

 私もここから。
 溜め込んで腐ってしまった何か。
 それを、ここに置いて忘れていきます。
 そして、私の隣にいる、私だけの光に照らされ、輝きだした安っぽい何か。
 ただ、それだけを持って進んでいきます。
 しがらみや足を取る何か、そういう余計なものは捨てて。

 歌う不死蝶様、2019年もありがとうございました。
 是非、2020年も私達を照らしてください。
 力強く、温かく、優しい。
 そんな光を司る、歌う不死蝶様。


  

 

 それでは、また次のお手紙でお会いしましょう。


 敬具 


 歌う不死蝶様と共に未来の夢を見る一人より

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砂漠でアマゾンを探している

 多くの人は砂漠でオアシスを探している。  平和ってオアシスを信じて、求めて彷徨う。   隣にアマゾンがあっても、砂漠の中で探す。  今、本当に欲しいもの、ITを忘れかけながら。  砂漠のオアシスなのか、豊かな水源があるアマゾンなのか。