2019年5月22日水曜日
二つの煮詰める
『煮詰める』という言葉にどのような景色を見ますか?
完成まじかで休む煮物でしょうか? 完成を求めて彷徨う煮物でしょうか?
一つの言葉に様々な景色が見える、『煮詰める』という蜃気楼。
テツガクちゃん
肯定さん、考えは煮詰まりましたか?
肯定
んー、煮詰まってきたかな……。
あっ、この『煮詰まる』という言葉には、二つの意味が隠れているいると思うんだけど、ガクちゃんの『煮詰まる』はどんな意味?
テツガクちゃん
私の『煮詰まる』ですか?
それは、美味しい煮物が煮詰まる、という感じで。
余分な水分を飛ばして、味が凝縮されたいい状態を『煮詰まる』と呼んでいます。
肯定さんの『煮詰まる』はどんな意味ですか?
肯定
なるほど。
僕の『煮詰まる』は、ガクちゃんとは少しだけ違う状態かも。
ガクちゃんのこの話題が僕にとって助け舟で。
行き詰った状態。それを『煮詰まる』と呼んだりすることが僕は多くて。
ほら、煮物って煮詰め過ぎてもダメじゃない?
そういう意味では、味の方向性が行き詰ってしまったな、と。
濃すぎて、薄すぎて、その往復で行き詰まる。
テツガクちゃん
たしかに、二つの意味が隠れていますね!
同じ『煮詰まる』という言葉の中に二つの世界があります。
煮物がいい状態になった『煮詰まる』。
煮物の味が定まらず、行き詰まった感じの『煮詰まる』。
濃い、薄い、その二つの世界を行き来して、十分煮詰まっているのに定まらない。
行き詰まった気持ちの煮物が煮詰まった状態の『煮詰まる』、という感じでしょうか?
肯定
そうそう! そんな感じ!
さすが、ガクちゃん。
そうなんだよ。
行き詰まった味の煮物が、煮詰まってしまった状態の『煮詰まる』。
正しさだけを考えたら、ガクちゃんのいい状態を表す『煮詰まる』の方がきっと正しい。
でも、言葉は正しさだけではなくて、正しくない影の部分も楽しめる。
行き詰まってしまった煮物が煮詰まった。
そんな世界だって楽しめる。
かみ合わない、通じない、伝わらない。
そんな誤解の世界も必要だと思えたら、きっと言葉をもっと楽しめる。
誤解を恐れず、二つの『煮詰まる』を操る。
それから、他の言葉の影も巧みに操り、あなただけの節を作る。
行き詰まることがあれば、それも煮詰め続けていく。
その先で、自分だけの節が『煮詰まる』といいですよね。
ということで、無事に今回の更新ができました。
ガクちゃん、ありがとう。ステキな話題という煮物を。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
-
懐かしい人に手土産を届けた時。 私は新しい名前を得た。 その人は私に気づかなかった。 名乗っても、隣の家の人だと思われた。 怒って然るべき事かもしれない。 だけど、私は笑った。 私は――新しい名前を得た、ランドール・スティーブンス氏。
-
その家族は『ザ・ニューヨーカー』って雑誌に住んでいて。 たった1枚、1コマに生きていた。 それがいつの間にか。 愉快なフィンガースナップと共に1枚の画面にやってきた。 1937年から飛んできた、アダムス・ファミリー。
-
最近になって思い出した。 人にも翼はある、鳥の翼とは違うけど。 空は飛ばない、代わりに宇宙を飛ぶ。 記憶ってガラスの靴で新しい今日へ飛ぶ。 今日どころか――世界を飛び越えてしまう。
0 件のコメント:
コメントを投稿