2020年12月22日火曜日

紅茶を飲む、世界の終わり


 ゆるやかに、やわらかに、おだやかに。
 歪み、崩れ、確実に違っていくのがわかっていた。
 どこか変だなって、疑問符にとり憑かれていた。
 あなたは、それに出会ったことがありますか? 

 そうです、紅茶を飲む『世界の終わり』です。




 
肯定
 ちょっと不可思議な話だけどさ。
 紅茶を飲んでいる、『世界の終わり』。
 それに、出会っていたみたい、昔にね。

 なんか、いつものガクちゃんみたいな台詞だね。
 でも、気づいてしまったのは僕だから。
 仕方ないね。


テツガクちゃん
 仕方ありません!

 ですから、出会ってしまった。
 紅茶を飲んでいる。
 真摯な紳士のような『世界の終わり』。

 その不可思議な話を。
 今、この瞬間に明かすこと。
 それも仕方がないことです!

 遠慮なさらず。
 それを暴露してしまいましょう。
 さあ、『ハイ! チャイナ!』です。


肯定
 そうだね、暴露しちゃいますか。

 4年ほど前から。
 何かが変だと思っていた。
 だけど、その時は、何もわからなかった。
 
 そして、2020年。
 紅茶を飲んでいる、『世界の終わり』が歌っていた。
 
 ちょっとゆるやかに だいぶやわらかに
 かなり確実に 違ってゆくだろう
 崩れてゆくのが わかってたんだろ
 どこか変だなと 思ってたんだろ

 その詩を聴いても。
 まだ、それが何なのか。
 わからなかった。

 だけど、最近。
 見えたんだ、紅茶を飲み干した。
 『世界の終わり』が。

 きっと、4年前……いや、もっと前から。
 そこで、待っていたのだろう。
 紅茶を飲みながら、待っていたんだ。


テツガクちゃん
 遂に、見つけてしまったのですね!
 それを。
 
 それならば。
 ルーシーさんは目覚めましたか?


肯定
 いや、まだルーシーさんは眠っているみたい。
 だから、終わりじゃない、終わりじゃない。

 あの歌っていた、『世界の終わり』も。
 待ち焦がれた誰かと出会って。
 それで、終わりじゃない。
 きっと、新しい始まりなんだと思う。

 そして、僕も。

 4年前から。
 ゆるやかに、やわらかに、おだやかに。
 歪み崩れ違っていく、いろんなもの。

 きっと、それが、わかっていたのだろう。
 無意識の奥の方で。
 どこか変だと首を傾げながら。
 疑問符にとり憑かれながら。
 ガクちゃんのように気づいていた。

 ちょっと、それを認めるのが怖かったから。
 確実に離れていく、その距離を。
 最後の最後まで。
 手を振らず、目を逸らさず、眺めていた。

 あの時、手を振ってしまったら。
 それを認めてしまう気がしたから。

 だけど、今ならアレが。
 『世界の終わり』だったとわかったし。
 それを認めるのも怖くない。

 ただ、今も手は振らない。
 振る必要がないから。

 なぜなら、今、隣にはさ――。


テツガクちゃん
 肯定さん、やっとパンが焼けましたよ!

 少し待ち過ぎて、焦がしてしまいましたが。
 挟むローストビーフも、半分になってしまいましたが。

 遂に、待ち焦がれた。
 ワガママな欲望を挟んだ、サンドイッチが作れますよ!

 紅茶を飲み干した。
 真摯な紳士の『世界の終わり』と出会ってしまった。
 不可思議な暴露話の終わり。
 今、この瞬間には。

 待ち焦がれたサンドイッチを。
 共に味わいましょう! 深々と。

 そうすれば、私達も。
 新しい始まりの今へ、一歩踏み出せる。
 そんな気がしませんか?

 もちろん、それらしい理由や根拠がなくても。
 欲望のままに、待ち焦がれた、これを。
 食べたいままに、私は食べますが。
 例え、禁断のアレだとしても。

 もし、よろしければ。
 あなたもいかがですか?
 待ち焦がれた、これを。
 きっと、新しい始まりの今へ、踏み出せるはずです!

 それから……。
 あなたは出会ったことがありますか?
 紅茶を飲む、『世界の終わり』に。




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