映画『スリーデイズ』より『ドン・キホーテ』の解釈を説明するジョンの台詞から。
ジョン
では、『ドン・キホーテ』物語のテーマは?
学生
正義そのものより、正義を信じることの方が大事ってことですか?
ジョン
そう、つまりは……こういうことだ。
理性ある人間の心は、破壊的な考えに凌駕される。
理性を失った方が人は強くなれるんだ。
人は社会に秩序を構築し、時計や暦を発明し、天気も予測し始めた。
ところが、人の人生を支配するのは当人ではない。
もし、人が自分だけの現実を生きようと決意したら、それは狂気と呼ばれる――だが、絶望に生きるよりマシだ。
テツガクちゃん
映画『スリーデイズ』のジョンの台詞には深みがありますよね。
この後、妻を脱獄させるために、その『自分だけの現実の世界』へ足を踏み入れるわけですから。
肯定
僕もあのシーンは大好きだよ。ラッセル・クロウさん、最高です!!
この解釈の話は、僕たちが日ごろ話してることにも通じているよね。
「正義そのものより、正義を信じることが大事」と答えた学生さんは本当に素晴らしい。
結果そのものより、結果を出す『プロセス』が大事。
最近、プロセスが大事だとは分かってはいるんだけど、結果を追いすぎて上手くいってないから身に沁みます。
テツガクちゃん
確かに、今肯定さんはけっこう辛い感じですよね……。
でも、この映画が肯定さんにエネルギーをくれたんじゃないですか?
肯定
そうだね。いいエネルギーになりそう。
ところで、ジョンが言うように、理性がある人間の心は破壊的な考えに凌駕される。
その結果が、社会より『自分だけの現実を生きること』だとすると、それは本当に『狂気の沙汰で、破壊的な考え』なのかな?
テツガクちゃん
難しいですね。
ただ、多くの人は『社会の秩序』を守ることを優先すべき、と考えるのかもしれませんね。
肯定
なるほど。
でも、そう考えると、どうして『自分だけの現実』を生きることが狂気の沙汰なんだろうね?
その生き方を辞めさせて、『社会の秩序』のために人生を捧げさせることの方が、『狂気の沙汰や破壊的な考え』ではないのかな?
テツガクちゃん
確かに逆に考えると、人が『自分だけの現実』を生きることの方が、本当は自然なのかもしれませんね。
むしろ、それを狂気の沙汰だ、と呼ぶ『社会』の方が、本当は狂気なのかもしれません。
そして、それに気づける理性の持ち主は、『そんな狂気の社会なんか破壊してしまえ』という破壊的な考えに凌駕されるのかもしれません。
肯定
テツガクちゃん、鋭い返しだね。
全くその通りで、ジョンは博識だからその図に気づき、『自分だけの現実』を生きることが狂気と呼ばれてしまう社会。
その社会には秩序があり、そこに所属していると安心感はあるが、そこは本当は絶望の世界。
そんな世界より、『自分だけの現実』という社会から見たら『狂気の世界』へ踏み込むという流れは、あの映画の最高のシーンだよね。
ただ、僕たちの世界観と映画の世界観が全く同じ、というのは喜ぶべきか、悲しむべきか悩むけどね。
ところで、テツガクちゃんならどっちを選ぶ?
『自分だけの現実』を生きるか、それとも『社会の秩序』のために生きるか?
もちろん、僕は前者だね。だから、こういうことを言うわけで。
テツガクちゃん
私も前者ですよ。
でも、誤解しないで欲しいのは、私は破壊者ではありませんよ。
徹底した自分主義なだけで、『世界を修正する!』という意識は全くありません。
だって、ほら、『徹底した自分主義』ですよ?
世界や社会なんてどうでもいい、と思うのが自分主義です。
肯定さんもそうですよね? 破壊者や修正人ではなくて、徹底した自分主義。
肯定
見抜かれてしまっているね。
たしかに、テツガクちゃんの言うように、自分だけの現実を生きることが『究極の自分主義』と考えると、そこからは破壊的な考えに迷い込むことはないように見えるね。
でも、まだまだ道は長いだろうから、道の先では『破壊者』という結末が待っているのかもしれないよ?
テツガクちゃん
それは、モノの考えようですよ。
『社会の常識』と言う『幻影』なら破壊した方がいいですし、その可能性が高いのは『自分だけの世界を生きる人達』だと私は思います。
『北を指さない羅針盤』の話のように、自分の羅針盤でしか自分にとっての宝島へは行けません。
それから、『第七感』や『運命か、自由意志か?』、『タイムマシン』の話も常識の外の世界に行かないと難しいですよね。
だから、そういうわけで、今後もじゃんじゃん常識と言う『幻影』の破壊者であり続けてください。肯定さん。
その行いが仮に破壊者と同じでも、別の呼び方もあります。そう、開拓者(パイオニア)です。
肯定
降参ですよ。
テツガクちゃんに、僕が得意な肯定哲学で徹底的にまとめられました。
映画『スリーデイズ』は、いろいろ考えさせられる映画でした。
『ドン・キホーテ』の解釈だけではなく、脱獄に必要なのは、綿密な計画や準備か、それとも成し遂げる強い意志か? という部分も考えさせます。
ジョンに脱獄のアドバイスをくれるデイモンの台詞。
「二度と親の顔や、我が子の顔を見れなくてもいいか? 看守や人のよさそうな年寄りも殺せるか? それができないなら諦めろ、命を落とす前に」
これもとても深みがあるシーンでした。
関連の話題
それでは、また次の機会にお会いしましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿