2018年6月13日水曜日

詐欺師は嘘をつかない。だから騙される

 
 人を騙すのに嘘は必要ありません。それより相手のフォーカス(視点)を支配することを意識することが大切です。
 例えば、
 「今朝、駅前で新しいお店を見つけてね。そこの朝食が最高なんだよ! 今度一緒に行かない?」
 この場合、この人の朝食はなんだと思いますか? 少し優しい質問ですが。










 
肯定
 テツガクちゃん、詐欺師は嘘をつかないんだよ。
 少なくとも『ホワイトカラー』のニール・キャフリーは、大きな嘘はつかない。
 家にいないのに、「家にいるよ」と答える。
 この程度の嘘はつくけど。


テツガクちゃん
 肯定さん、既に小さな嘘をついていますよ!
  
 それは別にして、詐欺師は嘘をつくから詐欺師なのではないのですか?


肯定
 詐欺に嘘は必要ないのさ。
 むしろ、その嘘が大きな足枷になることだってある。
 それならば、嘘を使わずに騙した方がいいよね?

 例えば、『今朝、何を食べました?』という質問があるとするじゃない?
 それに対して、
 「僕、今朝○○にあるホテルに行ってきたんだけど、そこの朝食が最高なんだよ! 今度よければ一緒に食べに行かない?」  と返した場合、彼は何を食べたと思う?


テツガクちゃん
 そうですね……。
 そのホテルの朝食、と答える人もいると思いますが……。
 
 この問題は少し優しいですね。
 彼が何を食べたのか?
 それは、『答えていない』ですね。


肯定
 さすが!
 でも、ちょっぴり騙されちゃうよね?
 ああ、今朝はホテルの朝食を食べたんだ、と。
 
 たしかに、テツガクちゃんが言うように、彼は質問に答えていない。
 だけど、こうやって嘘をつかずに、やり過ごすのが詐欺師なんですよ。少なくともニールは。
 
 だから、朝ホテルにいたことは間違いないんだけど、そこで朝食は食べていない。
 朝食を食べずに、そこで何か大切なことをしていたに違いない、と考えるのがピーターの役割だったり。
 
 とにかく、人を騙すのに嘘は必要ではないんだよ。


テツガクちゃん
 そうかもしれませんね。
 
 そういえば、『フォーカス』という映画でも、『スリは相手のフォーカス(視線)をコントロールして盗む』と言っていましたね。

 スリは暗闇で踊るダンス。
 フォーカスという光を操り、作り出した暗闇を踊る。


 フォーカスを支配すれば、思い通りに踊ることができるのかもしれませんね。


肯定
 そうだね。
 これは物語でもそうだよね。
 作者は読者のフォーカスをコントロールできる。
 どの情報に注目してもらい、どの情報を隠したい、というのも思いのまま。


 あっ、隠すというのは、『情報を出さない』という意味ではなく。情報を出しながらも違う情報にスポットを当てたり、控えめにすることで、それが大切です。
 
 当たり前の中に重大な情報を入れておくと、意外と気づかないものです。


テツガクちゃん
 たしかに、『詐欺師は嘘をつく』という当たり前の中に、嘘をつかない詐欺師がいると、少し厄介なことになりますね。

 嘘をつくと思って行動したら、結局嘘をついていなくて騙されてしまう。
 嘘をつかないと思っていたら、小さな嘘に騙されてしまう。

 相手に、『この人は嘘をつくかもしれない』と警戒させた時点で、少し有利なのかもしれませんね。


肯定
 そうだね。
 その警戒心というフォーカスを上手く利用すれば、どんなダンスも踊れそうだね。

 僕達も物語を作る時は、読者のフォーカスを意識したいね。
 
 騙したいとかではないけど、嘘は一切使わずに上手くフォーカスを操って、暗闇を作って踊る。
 時には暗闇ではなくて、堂々と光の下で踊ってみせたり。

 人を騙すのには嘘は必要なくて、相手の注意をコントロールすることが大切だと思います。
 これを意識すると、何かを作るのが楽しくなるかもしれません。




 
 それでは、また次の機会にお会いしましょう。



0 件のコメント:

コメントを投稿

無関心は希望

 好きの反対は無関心。  そんなたわ言、誰が言ったのか知らないが。   今の私からすれば無関心は希望。  今まで気づけなかった、その未知は。  愛しの故郷、待ちきれない今は夢の今。