人を騙すのに嘘は必要ありません。それより相手のフォーカス(視点)を支配することを意識することが大切です。
例えば、
「今朝、駅前で新しいお店を見つけてね。そこの朝食が最高なんだよ! 今度一緒に行かない?」
この場合、この人の朝食はなんだと思いますか? 少し優しい質問ですが。
肯定
テツガクちゃん、詐欺師は嘘をつかないんだよ。
少なくとも『ホワイトカラー』のニール・キャフリーは、大きな嘘はつかない。
家にいないのに、「家にいるよ」と答える。
この程度の嘘はつくけど。
テツガクちゃん
肯定さん、既に小さな嘘をついていますよ!
それは別にして、詐欺師は嘘をつくから詐欺師なのではないのですか?
肯定
詐欺に嘘は必要ないのさ。
むしろ、その嘘が大きな足枷になることだってある。
それならば、嘘を使わずに騙した方がいいよね?
例えば、『今朝、何を食べました?』という質問があるとするじゃない?
それに対して、
「僕、今朝○○にあるホテルに行ってきたんだけど、そこの朝食が最高なんだよ! 今度よければ一緒に食べに行かない?」 と返した場合、彼は何を食べたと思う?
テツガクちゃん
そうですね……。
そのホテルの朝食、と答える人もいると思いますが……。
この問題は少し優しいですね。
彼が何を食べたのか?
それは、『答えていない』ですね。
肯定
さすが!
でも、ちょっぴり騙されちゃうよね?
ああ、今朝はホテルの朝食を食べたんだ、と。
たしかに、テツガクちゃんが言うように、彼は質問に答えていない。
だけど、こうやって嘘をつかずに、やり過ごすのが詐欺師なんですよ。少なくともニールは。
だから、朝ホテルにいたことは間違いないんだけど、そこで朝食は食べていない。
朝食を食べずに、そこで何か大切なことをしていたに違いない、と考えるのがピーターの役割だったり。
とにかく、人を騙すのに嘘は必要ではないんだよ。
テツガクちゃん
そうかもしれませんね。
そういえば、『フォーカス』という映画でも、『スリは相手のフォーカス(視線)をコントロールして盗む』と言っていましたね。
スリは暗闇で踊るダンス。
フォーカスという光を操り、作り出した暗闇を踊る。
フォーカスを支配すれば、思い通りに踊ることができるのかもしれませんね。
肯定
そうだね。
これは物語でもそうだよね。
作者は読者のフォーカスをコントロールできる。
どの情報に注目してもらい、どの情報を隠したい、というのも思いのまま。
あっ、隠すというのは、『情報を出さない』という意味ではなく。情報を出しながらも違う情報にスポットを当てたり、控えめにすることで、それが大切です。
当たり前の中に重大な情報を入れておくと、意外と気づかないものです。
テツガクちゃん
たしかに、『詐欺師は嘘をつく』という当たり前の中に、嘘をつかない詐欺師がいると、少し厄介なことになりますね。
嘘をつくと思って行動したら、結局嘘をついていなくて騙されてしまう。
嘘をつかないと思っていたら、小さな嘘に騙されてしまう。
相手に、『この人は嘘をつくかもしれない』と警戒させた時点で、少し有利なのかもしれませんね。
肯定
そうだね。
その警戒心というフォーカスを上手く利用すれば、どんなダンスも踊れそうだね。
僕達も物語を作る時は、読者のフォーカスを意識したいね。
騙したいとかではないけど、嘘は一切使わずに上手くフォーカスを操って、暗闇を作って踊る。
時には暗闇ではなくて、堂々と光の下で踊ってみせたり。
人を騙すのには嘘は必要なくて、相手の注意をコントロールすることが大切だと思います。
これを意識すると、何かを作るのが楽しくなるかもしれません。
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それでは、また次の機会にお会いしましょう。
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