2019年3月7日木曜日

届かない手紙 7通目

 
 拝啓

 歌う不死蝶様、寒さが徐々に旅支度を始め、南から暖かさがやってくる時期になりました。
 南へ向かう寒さがこれからどんな旅を始めるのか、気になりますが、暖かさが連れてきた新しい風も気になります。
 今回はそんな風のことをこの手紙に記します。
 
 今、私は相方と共に『当たり前』を集めています。あたコレ(当たり前コレクション)という感じです。
 朝、コーヒーを飲むように、物語や絵、それらを使った何か、そんなコンテンツという幻を創る。
 それが当たり前になるといいな、と思っています。

 仕事のようで、趣味のようでもあって、そんな境界線を通り越した当たり前。
 そんな存在にできたら、と。
 
 歌う不死蝶さんにとって、歌を歌う、ということはどういうことでしょうか?
 やはり、仕事でしょうか? それとも趣味に近い何かでしょうか?

 すみません。失礼な質問だと思いますが……。
 どうしても気になったんです。
 仕事や趣味という境界線を超えた先の当たり前。

 自分にとって大切なモノをその当たり前に変えられたら、どれだけ幸せだろうか、と。
 
 そして、勝手にあなたの背中を想ったんです。
 もし、ただの仕事であったら、身体を痛めながら歌うのだろうか?
 明日、歌うことで命を落としてしまうかもしれない、という状況でも歌うのだろうか?

 その背中をプロフェッショナル、と呼ぶのかもしれませんが……私には、かすかに原点の光が見えた気がしました。 
 少年の日、初めて飛ばした紙飛行機を飛ばす瞬間のような。

 仕事であれば、他の選択肢もあったでしょう。
 趣味であれば、また違うやり方もあったでしょう。 
  
 あなたが選んだ道、その道の先で私達が受け取ったもの。
 それは、仕事を背負う人や、趣味の服を着こなす人にはつくれないものでした。
 
 決して、仕事や趣味が悪いとは思っていません。
 仕事は大切ですし、私は趣味が大好きです。
 たくさん趣味があるので、趣味が仕事に変われば最高だと思います。

 ですが、それよりも気になる、暖かい風が運んできたもの。
 それが『当たり前』という幻です。
 この幻が、私達があなたから受け取ったものに近い気がします。

 影のように側にある『当たり前』。
 大切なモノをそんな身近な存在にしたい。
 人を騙し欺き、人から時間や心を盗み、物語を描きながら人を作家に変える奇術。
 そんな三冠王という幻を描く、当たり前の幻。

 それを見ることができたら、あなたがステージの上で見た景色と近いものが見える気がしています。
 南の世界を旅してきた暖かい風が連れてきた新しいこの風。

 私達もこの風に乗って、ロックンロールを当たり前に変える旅を続けます。
 歌う不死蝶さんと冒険するフロンティアを探すために。    


 
  

 それでは、また次のお手紙でお会いしましょう。


 敬具


 歌う不死蝶様と共に未来の夢を見る一人より

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砂漠でアマゾンを探している

 多くの人は砂漠でオアシスを探している。  平和ってオアシスを信じて、求めて彷徨う。   隣にアマゾンがあっても、砂漠の中で探す。  今、本当に欲しいもの、ITを忘れかけながら。  砂漠のオアシスなのか、豊かな水源があるアマゾンなのか。