2022年3月30日水曜日

いつだって子供は大変だね


 スリーナインが停まった、一代目の僕らはスクラップ世代。
 代わりは掃いて捨てるほどにいた。
 だけど、今じゃ、みんなV.I.Pの世代。
 特別扱いの子供が一番で、邪魔なのは大人なのさ。
 気味が悪い、君が悪いのだから、それを譲れよ。
 結局、いつだって大変だね。





否定
 いつだって、子供は大変だね。
 誰が子供なのか、私は知らないけどさ。

 そんな私が育ったのは。
 一代目の隣に停まった、スリーナインの時代。

 その時代では。
 知らない大人にとって。
 子供はスクラップだった。
 いくらでも代わりがいるのだから。

 辞めてもらってかまわない。
 壊れてもらってかまわない。
 死んでもらってかまわない。

 なんなら、今すぐに消えてくれ。
 目障りだ、知らない大人の邪魔だ。

 野球場でホームランボールが飛んでくれば。
 君達にその価値はわからないのだから。
 そのボールはまだ早い。
 大人しく大人の他人に渡しなさい。

 ようこそ、スクラップ世代。


フィロソフィー
 初めまして、スクラップ世代。
 けっこう、大変な時代でしたね。

 大人が一番で、邪魔なのは子供。
 逆だったら、よかったのでしょうか?


否定
 いや、そうでもないさ。
 大人の言うことは、何も間違っていない。
 あのボールだって、たしかにそうだ。

 昨日観た野球も。
 今日ゲームが発売されたら。
 明日には忘れている。

 もの忘れが酷い、スクラップな私達は。
 未来なんかないのが当たり前で。
 期待なんかされないのが当然で。

 のびのび、ゆとりがあって。
 いつでも、廃棄処分が待っている極楽コースさ。

 しかし、今じゃ。
 信じられないほどのV.I.P待遇。

 バトンを繋ぐというよりは。
 今まで、虐げられてきた誰かが。
 それを取り返すような改革だ。


フィロソフィー
 それは、とてもステキなことですね。
 否定さんは、何か不満があるのですか?

 新しい世代が。
 V.I.P待遇されている。
 その今が、不満なのですか?


否定
 鋭く鈍いじゃない。

 そうだね、気に入らないよ。
 何が何でも特別扱い。
 正直、気味が悪くて、君が悪いほど。
 不気味だし気持ち悪い。

 ホームランボールを譲るのが。
 当たり前になった、知らない大人。
 その表の情が。


フィロソフィー
 知らない大人の方でしたか……。
 たしかに、ちょっと不気味かもしれませんね。
 何が何でも特別扱いでは。

 その手に隠しているのは。
 何でしょうか?
 そう、訊ねたくなりますね。


否定
 何を隠しているのかね。
 だいたい、察しはつくけどさ。

 その前に。
 V.I.P世代の彼らが大人になったら。
 どうなるのかね。

 きっとさ、そのまま変わらず。
 特別なんだろうね。

 そして、次の世代は。
 私達と同じ、スクラップ世代。
 ようこそ、似た者同士。

 結局、どちらがいいのか。
 わからないけど。
 V.I.P世代も大変だと思う。


フィロソフィー
 たしかに、大変かもしれませんね。


否定
 大変だよ、いろいろ、期待されて。
 ここまで特別扱いされたら。
 世界各国で、大統領でもやってもらわないと。
 全く割に合わない。

 一方で、私達スクラップ世代は。
 このまま、廃棄処分になっても。
 なんの問題もない。

 だって、昔から言われてきたことだから。

 君達に何ができるって言うんだ。
 まだ、それは早い。
 大人に任せて、言うことを聞いていればいいんだ。
 言うことを聞けない悪い子はスクラップだ。

 そして、外に放り出される。

 私達に未来なんてないんだよ。
 そんなことを、わかっているのが。
 スリーナインが一代目に停まった、スクラップ世代だ。
 気楽な極楽チルドレン。

 ホント、V.I.P世代もいろいろ大変だね。
 特別扱いの期待と責任など。
 いろんな荷物が多くて。
 どちらがいいのかわからない。

 だけど、私達と同じように。
 受け取った、愛情もあるのかな?
 今でも、あるって信じたい。
 スクラップ世代の私達にも届いた愛情とか。

 あなたは何世代でしたか?




それでは、また次の機会にお会いしましょう。






0 件のコメント:

コメントを投稿

無関心は希望

 好きの反対は無関心。  そんなたわ言、誰が言ったのか知らないが。   今の私からすれば無関心は希望。  今まで気づけなかった、その未知は。  愛しの故郷、待ちきれない今は夢の今。