積もるつもりがない、積もった嘘

　つくつもりもなく、積み重ねてしまう嘘。
　そういう嘘もあるようです。
　それは、狐が噛み付きたくなるような、嘘です。 





テツガクちゃん
　気づいてしまいました！　私！
　つくつもりもなく、積もってしまった嘘。
　そんな嘘もあることに。

　いわゆる。
　嘘をつくつもりで、積み重ねてしまったわけではない嘘です。


肯定
　ああ、そんな嘘もあるのかも……。
　僕も覚えがあるよ。
　
　心を込めてボールを投げなさい。
　そう語る誰かの言葉に、僕の中の狐は嘘を感じなかった。
　だから、心の奥の方まで届いた。

　これからは心の時代が来る。
　そう語った誰かの言葉に、僕の狐は無意識に噛み付いた。

　本当かい？　本当にそんな時代が来るとでも？
　そう返すのは、すっぱい葡萄を見極める達人の狐だ。

　きっと、後者の言葉には。
　つくつもりなく、自覚もない。
　だけど、確かな嘘。
　受け取る人には嘘に見えてしまう。
　そんな確かな嘘があったんだろうね。


テツガクちゃん
　それは、どんな嘘でしょうか！？

　これからは心の時代が来る。
　その景色の中にある、確かな嘘はなんでしょうか？


肯定
　しばらく僕も、狐がそう語る、その理由がわからなかったよ。
　どうして、狐はそう語るのだろうか？　と。

　だけど徐々に、その暗い霧の中から見えてきたんだ。
　積み重なり、確かな重さを持った、積もった嘘がね。

　心がある時代なんて、永遠に来ない。
　なぜなら、既にそういう時代だから。


テツガクちゃん
　はっ、たしかにそうですね！
　既に、そういう時代なのに。
　再びそれがやってくるというのは、なかなか不思議な光景ですね。

　嫉妬心や出来心、遊び心に猜疑心。
　それらは、今日も世界を元気よく回しています。
　もちろん、他の心達も頑張っています。

　美しいそれらの力は、心の力です。

　心の時代の今、この瞬間。
　そこで、そういう時代が改めて来る、と語る。
　その理由は何でしょうか？

　つくつもりがなかった、積もった嘘の奥の方。
　そこに、あるものは何でしょうか？


肯定
　僕の勝手な解釈だけど。
　誰かにとって、今の心の時代は望んだものではないのでしょう。
　きっと、本当に欲しかったのは、心の時代ではなく。
　温かさだけがある時代。

　嫉妬心や出来心など。
　不と呼ばれる心などなく、温かい心だけがある。
　極楽の温泉のような時代。


テツガクちゃん
　なるほど、そういう本音のような理由があるのかもしれませんね。
　それはステキな理由ですね。

　冷たい心などなく。
　ただ、温かい温泉のような心だけが、湧き溢れている時代。

　私も見てみたいです。


肯定
　そうだね。
　もちろん、僕も見てみたいよ。
　そのとてもステキな時代をね。
　笑い話ではなく、本当に心の奥の底から見てみたいよ。

　だから、言うのさ。
　自分が心の奥の底から、欲しがっているものを。
　誰が見ても本音だと伝わる、音をね。

　心の奥の本音と語った言の葉。
　そこに、ほんの少しでも違いがあれば。
　人はそこに、嘘という幻を見てしまうかもしれないから。

　だけど、これがほんの少しだけ難しいんだよね。
　自分が本当に欲しいもの。
　それすらもわからない、『Mr.ジョーンズ』だからさ。


テツガクちゃん
　難しそうですね……。
　ですが、面白そうなことです！
　
　本人はつくつもりもなく、自覚もない嘘。
　それは意外にも、誰かには見抜かれてしまう。
　確かな重さがつもり積もった、嘘。

　そのまま、知らずに積み重ね、歪んでいく。
　いつまで経っても変わらずに、歪み続ける。
　
　その歪んでいく日々。
　それは最高にステキなものです。

　なかなか、本音が伝わらない。
　本音と語った音に、ほんの少しの違いがあるから。
　つくつもりもない、積もった嘘という幻を見せてしまう。

　それは、とても愛しい伝説のようです。
　
　あなたはどうですか？
　つくつもりがなかった、積もった嘘。
　それをどれくらい積み重ねましたか？





　　

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それでは、また次の機会にお会いしましょう。