やめろ大臣

　『やめろ大臣』は遠慮も知らない。
　自分が気に入らない何かに出会えば、偉そうに叫ぶ大臣。
　しかし、大臣は辞めない常套句。
　ですから、あなたも辞めないでください。
　きっと、それは、よく見れば消えてしまう。
　幻の影、幻影ですから。







肯定
　ガクちゃん、『やめろ大臣』って知ってる？
　
　自分が気に入らない何か。
　それに出会えば、辞めろと偉そうに叫ぶ大臣。
　
　文句があるのなら辞めろ。
　不満があるのなら辞めろ。
　できないのなら辞めろ。
　辛いのなら辞めろ。


テツガクちゃん
　『やめろ大臣』ですか？
　初めて知りました。

　何かを辞めてもらうこと。
　それが、好きなのでしょうか？


肯定
　そうかもしれないね。

　辞めろ、辞めろ、辞めろ。
　今日も辞めろのミサイルを飛ばす。
　『やめろ大臣』は、遠慮も知らない。

　そのうち、人生を辞めろ、と言ったりね。
　北のターリンの同志のように。
　
　『やめろ大臣』、ミサイルが大好きな大臣。
　戦争と粛清も大好き、『やめろ大臣』。
　どうか、辞めないで、『やめろ大臣』。


テツガクちゃん
　えっ、なぜ、辞めないで欲しいのですか！？


肯定
　なぜって……。
　
　『やめろ大臣』のお蔭で、平和に過ごせる人がいる。
　辞めろ、とミサイルが飛んで。
　それによって、築かれる平和な景色も確かにあるから。
　
　他の誰かが、苦しもうが争おうが。
　関係ない、知ったことではない、意味がない、興味がない。
　SIKを謳う歌の中に。
　
　さて、僕達はそのどちらの景色を見ているのかな？
　
　ミサイルが飛び交い、全てが消えた景色。
　それを平和な場所で、夜のニュースとして見る景色。


テツガクちゃん
　そうですね……。
　はっ、気づいてしまいました！　私！
　私と肯定さんは、同じ幻影を見ていることに。
　
　きっと、私達はお互い、心配な景色を見ているんですよ。
　全てが消えた景色でも、ニュースを眺める景色でもありません。
　今は目に見えない、そんな心配を見る景色です。
　
　『やめろ大臣』が、誰かの人生を辞めさせてしまう心配。
　そんな『やめろ大臣』が、人生を辞めてしまう心配。
　そして、その『やめろ大臣』に気づいてしまった心配。

　どこで肯定さんが、『やめろ大臣』に気づいてしまったのか。
　それはわかりませんが。
　どこかで、辞めろというミサイルを見たのでしょう。　

　私は、その見えない過去がとても心配です。
　ですが、安心でもなければ、心配でもない。
　大丈夫な今を一緒に見ましょう。

　大丈夫です。
　遠慮も知らない『やめろ大臣』が、辞めろといくらミサイルを飛ばしても。
　遠慮がない世界には届きません。
　
　辞めない『やめろ大臣』がいる限り。
　誰も何も辞めません。

　大丈夫です、大丈夫です。

　あなたもそうですよね？

　『やめろ大臣』も辞めません。
　だから、辞めないでください。
　少しだけ考えてみましょう。
　今、見ている、その景色を。

　きっと、それは。
　よく見れば消えてしまう幻の影、幻影です。
　だから、大丈夫です。

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それでは、また次の機会にお会いしましょう。