2022年6月7日火曜日

誰かの窓に映る影


 誰かの窓を覗いても、そこに映るのは自分。
 深縁を覗く時、深縁も覗いている。
 そんな誰かの窓は自分の影を映し出す鏡。
 ですから、想った気持ちは。
 相手の瞳を見れば、届くかもしれません。
 自分と向き合う、その勇気があれば。





テツガクちゃん
 誰かの瞳の窓には、何が映るのでしょうか?
 ちょっと、肯定さんの窓を覗かせてください。
 今、何を見ているのか、知りたいので!


肯定
 ガクちゃん、近い! 近いよ!
 そこまで近づかなくても見えるでしょ?

 それで、どう?
 今、僕が何を覗いているのか、わかった?
 僕の窓には何が映っているのかな?


テツガクちゃん
 ……見えませんでした。
 肯定さんの窓には私が映っています。

 今、肯定さんが見ている景色。
 それは、映りませんでした。


肯定
 どうしたの、ガクちゃん?
 それだよ、今の僕が見ていたものは。
 他に何があると言うのさ。

 そうだよ、その通り。
 今、僕が見ていたのは、ガクちゃんだよ。


テツガクちゃん
 そんな、他の景色を見ていませんでしたか!?

 はっ、気づいてしまいました……。
 他の景色を見ていたのは私、ということに。

 すみません、肯定さん。
 疑ってしまって。


肯定
 今度はどうしたの? 突然へこんで。
 やっぱり、ガクちゃんからは目が離せないね。

 でも、僕が見ていない時のガクちゃんは。
 どんな様子なのかな?
 それは、僕には永遠に覗けない景色。

 いわゆる、量子力学的な世界だからね。
 ガクちゃんもそうでしょ?
 知らない時の僕が、窓から何を見ているのか。
 それが知りたくて、僕の窓を覗いたんでしょ?


テツガクちゃん
 そうです。
 そうしたら、肯定さんが覗いていた景色ではなくて。
 私が映ってしまいました。

 深縁を覗く時、深縁も覗いている、です。

 ですが、よく考えたら。
 最初から肯定さんは私を見ていて。
 私の方が、違う景色を覗いていたのかもしれません。


肯定
 そうかもね。
 僕が他の景色を見ていたとは限らない。
 でも、ガクちゃんも他の景色を見ていたとは限らない。

 お互い同じ景色を見ていたのかもしれないけど。
 それを知るのは難しいね。

 ホント、自分が誰かを覗く時、誰かに自分が覗かれている。
 そんな感じだね。


テツガクちゃん
 少し損な感じですね。

 『観察していない時の誰か』の様子を知りたい。
 だけど、それは、ほんの少し難しいこと。

 なぜなら、観察してしまったら。
 その瞬間から。
 『観察していない時の誰か』ではなくなってしまいます。

 人が持つ窓も同じように。
 誰かの窓を覗けば、そこには自分が映ってしまう。

 その窓を覗かずに、心の中を知るのも。
 同じように少し難しいですね。


肯定
 そうだね。
 だけど、その方が面白いじゃない?
 『Mr.ジョーンズ』みたいでさ。

 本当は、同じ景色を見ているのかもしれないけど。
 それを確認しようとしても、確認できない。
 そこに映るのは自分の影だから。

 誰かの窓は自分の影を映す鏡。
 だから、誰かと話す時は、相手の瞳を見て話してみる。
 鏡の窓が映す、自分の姿と向き合う。
 誰かと話すことは、自分自身と会話するのと同じことかもしれませんから。

 あなたは自分と会話できるとしたら。
 どんな話をしますか?
 その伝えたい気持ち。
 誰かの窓を覗けば届くと思います。

 そう信じるのが。
 同じ景色を覗く選択肢の一つ。
 きっと、おそらく、たぶん。




それでは、また次の機会にお会いしましょう。












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穏やかな青さに身を任せるな

  穏やかな青さに身を任せるな。  諦めた夢を燃やせ。  のさばる星屑に怒りをたぎらせろ。  いかれ、いかれ、奪い取る星に。  飛べ、飛べ、白い影に。