2022年7月27日水曜日

向こう側にいたんだよな


 昔、あちらの教室から。
 向こう側のこちらを眺めていた。
 それが、今では。
 こちらから想い出の向こう側の
 あちらへ思いを馳せている。
 何とも不可思議な怪奇現象だ。





テツガクちゃん
 大きな建物。
 そこに並ぶ無数の窓。

 その一つ一つに。
 それぞれの向こう側があって。

 同じ今に生きているのに。
 別々の窓から覗いている。
 そんな人生は『スピードとナイフ』。

 ほんの少し不可思議な。
 怪奇現象ですね。


肯定
 ホント、偉く立派な怪奇現象だよ。

 あの横に長い建物。
 遠い遥か昔、僕が通っていた小学校。

 だけど、今では。
 本当に自分がそこにいたのか。
 信じられないほど。
 遠い遥か彼方まで来てしまった、今、この瞬間。

 奇妙奇天烈な人生の怪談だ。


テツガクちゃん
 新しいお化け。
 その存在に気づいてしまった。
 肯定さんの疑問符に。
 気づいてしまいました、私!

 いったい、どんな疑問符を。
 今、この瞬間に滑らせているのでしょうか?


肯定
 うつしみ……。
 というより、かわりみかな。 
 忍法じゃなくてさ。

 しばしば感じる退屈。
 その度、あちらから。
 教室の向こう側のこちらを眺めていた、昔。

 通りを歩く人、走る車。
 それらにテキトウな想いを滑らせた。

 そんな僕が。
 テキトウな想いの通行人として。
 こちらから想い出の向こう側の。
 あちらに、想いを馳せるなんて。

 随分と不可思議で感傷的な――。


テツガクちゃん
 人生の怪談のお化けですね。

 とても信じ難い怪奇現象ですが。
 どうにもならない、ゲンジツですね。

 明日へも昨日へも行けないはずが。
 いつの間にか。
 眺めていた、向こう側の今を歩いている。

 歩く今は同じなのに。
 歩く場所が全く違う。
 『スピードとナイフ』的な人生の怪談です。

 ですが……。
 もし、そうであるのなら。
 私達が眺めている、今、この瞬間の向こう側。
 得体の知れない、そのワンダーランドの上を。

 何れは、歩いているのかもしれません。
 かわりみの力を借りて。
 辿り着けるはずがなかった、向こう側へ。

 きっと、あなただって。
 いつの間にか、覗いていた。
 向こう側の上に。

 それならば。
 是非、ステキな向こう側を。
 覗き続けましょう。

 深縁を覗く時、深縁も覗いている、です。




それでは、また次の機会にお会いしましょう。













0 件のコメント:

コメントを投稿

無関心は希望

 好きの反対は無関心。  そんなたわ言、誰が言ったのか知らないが。   今の私からすれば無関心は希望。  今まで気づけなかった、その未知は。  愛しの故郷、待ちきれない今は夢の今。