楽をしたいわけじゃないんだよ

　〇〇すれば楽だよ。
　だなんて、大正解を押し付けてくる。
　斬首刑のマリー・アントワネットの目は死んでいる。
　そんなエクソシスト人形にはわからないだろう。
　楽をしたいわけではない、と望む愚かな人の心など。





肯定
　ああすれば楽だよ。
　そうすれば楽だよ。　
　こうすれば楽だよ。

　そんなことを言う。
　斬首刑のマリー・アントワネットの目は――。


テツガクちゃん
　もう既に死んでいます。
　白く濁ったミルクの淀んだ眼差し。
　エクソシストのような人形に。
　そんなお世話を言われたところで。

　ありがとうございました。
　お陰様で、間に合いました。
　ですね。


肯定
　まだ人形には、なりたくないからね。
　『死人に口なし、寡黙は人形』。

　そりゃ、楽だろうよ。
　黙っていればね。

　そのまま、考えずに。
　ただ作業をしていれば。
　そりゃ、楽だよ。

　でも、ちっとも楽しくはないし。
　全く面白くもない。

　楽をするだけが大正解とは限らないって。
　賢過ぎる人形にはわからないか。


テツガクちゃん
　賢過ぎる人形には。
　愚かな人の気持ちなんて。
　一ミリもわからないでしょうね。

　なんせ、目が死んでいますから。
　斬首刑のマリー・アントワネットですから。
　めくらでつんぼな泥人形ですから。

　それも詮無きことです。
　最初から関心などないですから。

　一方的に押しつけることしかできない。
　ノータリン人形です。
　賢い案山子の方が愚かさを知っています。

　なんせ、あれだけ賢いのに。
　愚かな脳みそが欲しい、と願える。
　そんな愚かさがあるのですから。


肯定
　今日のガクちゃんはキレキレだね。
　冬のサンタクロースのそりよりも。
　キッレキレだ。

　そう、ただ楽をしたいわけじゃないんだよ。
　いきなり最強の主人公が。
　最後まで無双するゲーム。
　それを遊びたいわけじゃない。

　少しずつ思い通りになっていく。
　それが面白いから遊んでいるんだ。


テツガクちゃん
　そうです、遊んでいるんです。
　私と肯定さんは。

　自分で考えて、悩んで、落ち込んで。
　スゲー、馬鹿げたことを繰り返して。
　振り返ってみたら。
　それが楽しかったって思える。

　ですが、ただ楽をしたら。
　いつ振り返っても。
　楽しくないのはわかりきっています。

　進んだ未知が自分にとって大正解だったのか。
　それは、振り返ればわかることです。

　もし、違うと感じて思ったら。
　今、進む未知を変える時です。
　北を指さない羅針盤を頼りに。

　楽をせずに振り返って。
　自分の足跡を自分の目で確認すれば。
　ちゃんと楽しさに気づけます。

　あなたが人なら。
　確かに持っているはずの心が。
　それを教えてくれます。

　楽を覚えたら。
　なかなか気づけませんが。
　自分で進んできた今なら。
　その答えは簡単です。

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それでは、また次の機会にお会いしましょう。