2025年11月11日火曜日

二つの鏡がある


 見えるものは自分を映す鏡らしい。
 そして、その鏡は二つある。
 自分に嫌な印象を与える鏡といい印象を与える鏡。
 ずっと、前者しか知らなかった。
 だけど、最近になって後者が――。





肯定
 この世界、この国でこう教え説かれた。
 鏡は自分を映すもの。
 そして、目に見える全ては。
 自分を映し出す鏡だと。

 その鏡は自分を悪く映し出していた。
 ずっと、それが自分だと思っていた。

 だけど――。
 ある日、洋楽を聴き始めた。
 昔は苦手だった洋楽を。
 今も英語は全くわからないけど。

 その鏡は僕をいい気分にさせた。
 自分でも驚くほど穏やかになれた。
 そして、こう気づいた。


テツガクちゃん
 自分で思っていたほど。
 嫌な奴じゃないかもしれない。
 自分にもこういう感覚がある。

 ずっと、そうだと思ってたけど。
 全く違う自分がいるのかも。
 最初から、ずっと。

 たまたま、酷く歪んだ鏡を見ていただけで。


肯定
 そう、きっと、どちらかが歪んでいる。

 あるいは、どちらも歪んでいないのかも。
 そもそも、鏡は誰も映していないのかも。
 鏡なんて存在しないのかも。

 どっちだっていい。
 ただ、ハッキリしているのは――。
 自分にない、と思っていた一面。
 それを見せてくれる、ITを見ていたい。

 当然だ。
 わかりきっている事を照らされても。
 全く見る価値もなく、信じるに値しない。

 だけど、全く違う一面を見せられたら――。
 少し信じたくなる。
 そして、信じずにはいられなくなる。
 見続ける事に価値が生まれる。

 忘れてしまった。
 自分の姿が――浮かぶ。


テツガクちゃん
 私に心臓を預けて。
 記憶の海に沈んでしまった。
 私の吸血鬼のホームズさん。

 知を吸えば、何にだって擬態できる。
 だから、忘れてしまう。

 ですが、鏡が本当の自分。
 ITを映し出しているわけではない。
 その事には気づいていた。
 ずっと、ずっと昔から。

 鏡にも二つあります。
 悪く映す鏡とよく映す鏡。

 ありのままを映す鏡を探そうとしますが――。
 それは鏡には映し出せない。
 写真にも収められない。

 なぜなら、大切なものは目には見えないから。

 もし、ありのままが目には見えないのなら。
 選んで決めるしかないですね。
 悪く映し出された姿か、よく映し出された姿か。

 きっと、誰かが様々な形容詞を貼るのでしょうが。
 それは、なんの優位性もない形容詞。
 動詞にも同士にもなれない形容詞。

 ですから、思い出すべきです。
 汝、自身を思い出し、知るべきです。
 老若男女問わず、全てのアンダーソン君。

 その欺瞞の鏡が映す姿。
 ITが本当の自分だなんて――最初から信じていませんよね?
 誰かが教え説いた姿。
 その向こう側にあなたを知る人が。

 バスチアン&アトレーユ。




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それでは、また次の機会にお会いしましょう。













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発見と発明の種明かし

 発見や発明は手品だ。  手品だからタネがある。   その種は――ひっくり返す事。  無から生み出すのではなくて。  忘れられた昔を今にひっくり返す。  そうやって、ニホンオオカミは見つかった。